関係用語の解説

A

 障害者の権利に関する条約第24条によれば、「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system、署名時仮訳:包容する教育制度)とは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が「general education system」(署名時仮訳:教育制度一般)から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている。
 インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である。小・中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要である。    


多様な学びの場

公開日時:2014年2月27日 17時03分
A
 「障害者の権利に関する条約」第2条の定義において、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」とされている。なお、「負担」については、「変更及び調整」を行う主体に課される負担を指すとされている。
 「合理的配慮」の決定・提供に当たっては、各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。各学校の設置者及び学校は、障害のある子供と障害のない子供が共に学ぶというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、「合理的配慮」の提供に努める必要がある。その際、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、何を優先して提供する必要があるかなどについて、共通理解を図る必要がある。

※ 平成28年4月から施行される「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」では、行政機関等について、合理的配慮の提供が具体的な法的義務となっている。

(参考:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律) 
 (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)
第七条
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
公開日時:2014年2月27日 17時04分
A
 障害のある子供に対する支援については、法令に基づき又は財政措置により、国は全国規模で、都道府県は各都道府県内で、市町村は各市町村内で、教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは、「合理的配慮」の基礎となる環境整備であり、それを「基礎的環境整備」と呼ぶ。これらの環境整備は、その整備の状況により異なるところではあるが、これらを基に、設置者及び学校が、各学校において、障害のある子供に対し、その状況に応じて、「合理的配慮」を提供する。
 「合理的配慮」の充実を図る上で、「基礎的環境整備」の充実は欠かせない。そのため、必要な財源を確保し、国、都道府県、市町村は、インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、「基礎的環境整備」の充実を図っていく必要がある。その際、特別支援学校の「基礎的環境整備」の維持・向上を図りつつ、特別支援学校以外の学校の「基礎的環境整備」の向上を図ることが重要である。また、「基礎的環境整備」を進めるに当たっては、ユニバーサルデザインの考え方も考慮しつつ進めていくことが重要である。
 なお、「基礎的環境整備」については、「合理的配慮」と同様に体制面、財政面を勘案し、均衡を失した又は過度の負担を課さないよう留意する必要がある。また、「合理的配慮」は、「基礎的環境整備」を基に個別に決定されるものであり、それぞれの学校における「基礎的環境整備」の状況により、提供される「合理的配慮」は異なることとなる。

関係図
公開日時:2014年2月27日 17時05分
A
 小・中学校等や特別支援学校の学習指導要領等においては、「交流及び共同学習」として、障害のある子供と障害のない子供が活動を共にする機会を積極的に設けるよう示されている。
 障害のある子供と障害のない子供が一緒に参加する活動は、相互のふれ合いを通じて豊かな人間性をはぐくむことを目的とする交流の側面と、教科等のねらいの達成を目的とする共同学習の側面があるものと考えられ、「交流及び共同学習」とは、このように両方の側面が一体としてあることをより明確に表したものである。


公開日時:2014年2月27日 17時06分
A
 地域内の教育資源(幼・小・中・高等学校及び特別支援学校等、特別支援学級、通級指導教室)それぞれの単体だけでは、そこに住んでいる子供一人一人の教育的ニーズに応えることは難しい。こうした域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)により域内のすべての子供一人一人の教育的ニーズに応え、各地域におけるインクルーシブ教育システムを構築することが必要である。
 例えば、地域内の関係者でケース検討会議を行い特定の子供の合理的配慮について検討したり、通級指導担当教諭が地域内の各学校を巡回指導したりするなどの取組が考えられる。


公開日時:2014年2月27日 17時07分
A
 特別支援学校は、小・中学校等の教員への支援機能、特別支援教育に関する相談・情報提供機能、障害のある児童生徒等への指導・支援機能、関係機関等との連絡・調整機能、小・中学校等の教員に対する研修協力機能、障害のある児童生徒等への施設設備等の提供機能といったセンター的機能を有している。今後、域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)の中でコーディネーター機能を発揮し、通級による指導など発達障害をはじめとする障害のある児童生徒等への指導・支援機能を拡充するなど、インクルーシブ教育システムの中で重要な役割を果たすことが求められる。

(参考:学校教育法(抄))

第七十二条  特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。

第七十四条  特別支援学校においては、第七十二条に規定する目的を実現するための教育を行うほか、幼稚園、小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校の要請に応じて、第八十一条第一項に規定する幼児、児童又は生徒の教育に関し必要な助言又は援助を行うよう努めるものとする。

公開日時:2014年2月27日 17時08分
A
 「特別支援教育支援員」とは、公立幼・小・中・高等学校等において、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、担任教師等と連携し、日常生活上の介助(食事、排泄、教室の移動補助等)、学習支援、健康・安全確保、周囲の幼児児童生徒の障害理解促進等を行う者であり、平成19年度より、その配置に係る経費について、地方財政措置がなされている。

 なお、その名称については、法令上の規定はなく、「特別支援教育支援員」以外の名称で呼ばれることもある。

公開日時:2014年2月27日 17時11分
A
 「個別の教育支援計画」は、学校と他機関との連携を図るための長期的な視点に立った計画であり、障害のある子供の一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくという考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な支援を行うことを目的として策定される。
 障害のある子供に対し、一貫して的確な支援を行うためには、教育のみならず、福祉、医療、労働等の様々な関係機関、関係部局の連携協力が必要であり、連携協力する上で「個別の教育支援計画」を活用することが期待されている。
公開日時:2014年2月27日 17時12分
A
 「個別の指導計画」は、障害のある幼児児童生徒への指導を行うためのきめ細かい計画であり、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法を盛り込んだ指導計画である。例えば、単元や学期、学年等ごとに作成され、各学校において、これに基づいた指導等が行われる。
公開日時:2014年2月27日 17時13分