【48】周囲の生徒とコミュニケーションをとることが苦手で、自己否定的な発言や考え方をする広汎性発達障害のある高校2年生の生徒への合理的配慮の事例
A生徒は、B高等学校に在籍する広汎性発達障害の診断を受けている高校2年の生徒である。A生徒は自分の考えを文章にすることはできるが、話の中で自分の考えを伝えることが苦手である。授業では、分からないことがあっても自分から質問することもできずに黙っていることもある。また、グループ学習の際、他の生徒とのコミュニケーションがうまく取れず、会話も自己否定的になりやすい。
B高等学校では、校内支援委員会を開催し、A生徒への支援について検討すると共に、A生徒の個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成し、それらの計画を基に、教職員が情報の共有を図り、A生徒が自己肯定的になれるよう、A生徒の自己理解を促した。こうした取組により、A生徒が振り返りを行い、他の生徒への声のかけ方や、会話での応答の仕方について少しずつ考えられるようになってきている。
広汎性発達障害、自己否定的、コミュニケーション、個別の教育支援計画、個別の指導計画、教職員の共通理解
【47】知的障害のある自閉症の中学1年生の生徒が居住地校において、音楽の授業による交流及び共同学習を行った事例
A生徒は、特別支援学校(知的障害)(以下、「B特別支援学校」という)に在籍する中学1年生で、知的障害のある自閉症の生徒である。
本事例は、A生徒が居住地であるC中学校において、交流及び共同学習(以下、居住地校交流)を行った事例である。A生徒が興味をもっている音楽で交流及び共同学習に取り組んだが、A生徒が見通しをもつことができるようスケジュール表や、歌う曲の歌詞付き動画を準備して、事前学習をしてから交流に臨んだ。また、合奏では、手指の巧緻性に課題があるA生徒は、経験したことのあるデスクベルと鍵盤ハーモニカを使用したり、楽譜を作り変えたりするなど、C中学校の生徒と一緒に演奏できるように配慮した。
【46】不登校であった自閉症スペクトラム症の小学2年生の児童が楽しく学校生活を送るための取組
A児はB小学校の2年生で自閉症・情緒障害学級に在籍している。算数、工作、自然科学分野に興味関心が高い。A児は、規模の大きいC小学校の通常の学級に入学したがうまく馴染めず、小学1年生の2学期の運動会が終わった頃から、学校に行きたい気持ちはあっても登校できなくなり、1月にB小学校の特別支援学級に転入した。転入にあたって、保護者はB小学校に相談し、A児と学校や特別支援学級の見学をした。また、学校に対して、楽しい学校生活を送ってほしいことと自己肯定感や協調性の育成、こだわりへの配慮について希望した。
B小学校では校内支援委員会や全職員での研修を行い、A児の障害や、B小学校の特別支援学級に転入した経緯、A児への対応についての共通理解を図った。また、A児が1日の見通しをもてるように、1時間目を国語にし、個別の指導を行っている。これらの全職員での丁寧な言葉掛けや対応により、A児は学校で終日過ごせるようになってきた。
【45】肢体不自由と知的障害を併せ有する中学2年生の生徒の中学校における居住地校交流の取組
A生徒はB特別支援学校に在籍する中学2年生の生徒である。ソトス症候群であり、肢体不自由と知的障害を併せ有している。
本事例は、A生徒のC中学校における居住地校交流の取組についての事例である。
A生徒の学習の様子や移動等における支援の在り方について、事前に居住地校交流先の学級の生徒に知ってもらうために、「障害の理解」についての授業を行ったり、C中学校の特別支援教育コーディネーターから、全教職員に対して、A生徒の授業における合理的配慮の観点について伝えてもらったりすることにより、A生徒の居住地校交流をスムーズに行うことができた。また、授業の内容もA生徒の実態をふまえた内容で計画した。その結果、A生徒は、萎縮することなく最後まで居住地校交流に参加することができた。
今後は、C中学校とあらかじめ、交流に関する計画の擦り合わせを行い、B特別支援学校の年間の交流及び共同学習の計画との関連をもたせた取組を行いたい。
【44】知的障害と肢体不自由、視覚障害のある特別支援学校高等部2年の生徒が、高等学校で交流及び共同学習に参加するための合理的配慮
A生徒は、特別支援学校(知的障害)(以下「B特別支援学校」という。)に在籍する高等部2年生の生徒である。知的障害と肢体不自由、視覚障害(全盲)が重複しており、生活全般において介助を必要とする。
C高等学校との交流及び共同学習では、生涯スポーツ(パターゴルフ)や英語の授業等に参加した。
交流及び共同学習では、全盲であるA生徒に対して、活動しやすいように活動内容や方法を音で示すように心がけた。また、事前にC高等学校の生徒にはA生徒への関わり方を説明した。こうした配慮を行うことで、交流及び共同学習の当日は、A生徒も楽しく、積極的に活動することができた。パターゴルフでは、ボールをパターで探りながらホールまで運ぶのを交流相手校の生徒に声掛けで誘導してもらい、交流相手校の生徒と一緒に楽しむことができた。
【43】特別支援学校(肢体不自由)に在籍する中学1年生の生徒が居住地校交流を行うための取組
A生徒は特別支援学校(肢体不自由)(以下「B特別支援学校」という。)に在籍する中学1年生で、肢体不自由のある生徒である。A生徒は、脳性麻痺と知的障害、自閉症スペクトラム障害を併せ有し、歩行は可能であるが短下肢装具・靴を着用している。段差でつまずいたり、斜視のため見ることに関する課題もある。
本事例は、小学部段階で6年間継続してきた居住地校交流の積み重ねを経て、新たに居住地のC中学校の通常の学級の生徒と音楽の授業や学年集会を中心に交流及び共同学習を実施するにあたり、両校で合理的配慮を検討した取組である。
【42】感情のコントロールが難しい高等学校1年生の生徒の行動変容を促すための支援と合理的配慮
本事例は、高等学校1年生の生徒の行動変容を促すための支援と合理的配慮の事例である。
A生徒の学習状況は良好であるが、感情のコントロールが難しく、一度イライラすると暴言を吐いたり、粗暴な行動をとることもある。B高等学校に入学後もさまざまな場面で問題を起こし、その都度、指導を行ってきたが、同じような問題を繰り返していた。 そこで、出身のC中学校で行っていた合理的配慮を参考にした校内支援委員会での支援策の検討や専門家チームによるケース会議を実施し、A生徒に対する支援について教職員で共通理解を図った。
また、合理的配慮支援員による授業観察や面談の様子から、A生徒は感情が優先してしまうタイプであり、感情と行動を切り離したアドバイスが有効であるという助言をもらった。そこで、「A生徒の行動には問題があったが、A生徒自身を否定している訳ではない。」という視点を大切にしながら支援を行った。そして、A生徒の感情を受け止めながら、A生徒との信頼関係を築いてきたことで、問題行動に対しての指導についてもA生徒が納得する様子がみられた。
【41】脳性まひで知的障害のある小学3年生の児童に対して、具体的な操作や視覚的な教具を活用した実践事例
本事例は、B小学校特別支援学級に在籍する知的障害を併せ有する脳性まひのA児(3年)を対象として行った合理的配慮の事例である。A児は、音声言語だけでは学習や活動の手順を理解することが難しい。A児が、学習や活動に見通しをもち、進んで学習に取り組みながら、「わかる・できる」楽しさを実感し、自分に自信をもつことができるようにするために、算数の学習において教材の視覚化を中心に支援を行った。
具体的には、活動の手順を示した板書、10までの数を正しく数えて大小比較することができるような教具の開発、問われている内容を把握することができるように構造化した学習プリントの作成である。これらの点から支援を行った結果、A児は活動に見通しをもち、主体的に活動しながら10までの数の大小比較を正確に行うことができるようになった。
【40】注意欠陥多動性障害と自閉症スペクトラム障害を診断された中学3年生の生徒への合理的配慮の提供の取組
A生徒は、小学校では、先天性の心疾患のため、病弱・身体虚弱学級に在籍していた。
中学に入学してからは、集団で行動できないこと、身辺が清潔に保てないこと、不器用なためうまくできない様子が多くみられた。そのため、スクールカウンセラーが知能検査を実施し、更に児童精神科専門医の診断を受けたところ、A生徒は注意欠陥多動性障害及び自閉症スペクトラム障害と診断された。
A生徒に対して教科ごとに配慮を行うとともに、各教科で出された課題の内容や課題の提出期限を保護者にも知らせたり、各教科担任がこまめに指示したりするようにし、A生徒が課題を期限内に提出できるように配慮した。さらに、欠席が多いA生徒のために、各教科担任が欠席した日のノートのコピーを渡す等の配慮を行った。これにより、A生徒の成績が大きく伸び、結果として、第一志望の高等学校に合格した。このことは、A生徒にとって大きな自信になった。
心疾患、注意欠陥多動性障害、自閉症スペクトラム障害、通常の学級、合理的配慮
【39】ADHDのある小学4年生の児童が、通級による指導において、苦手であるひらがなの習得を目指すための合理的配慮に関する事例
A児は、通常の学級に在籍する、注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉的な傾向を併せ有するB小学校に在籍する4年生である。小学2年生から通級による指導を受け、通常の学級でも合理的配慮の提供を受けている。
A児は、他の児童とトラブルになることが多く、学習面では、読み書きへの困難を抱えている。小学2年生の5月より、通級による指導で個別の指導を受けるようになった。通級による指導では、専門性のある教員が、ひらがな文字の獲得、言語力を伸ばす指導と、自己をコントロールする力を養う指導を行っている。通常の学級では、他の児童とトラブルが生じた場合には、A児からじっくり話を聞き、A児にも納得できる結論を導きだすように指導・支援している。学習面では、漢字にルビをふる、音楽のリコーダーの学習では楽譜を変える等の変更を行い、「できる・わかる」を感じ、達成感をもつことができるように配慮を行った。
その結果、A児は他の児童とのトラブルが少なくなった。また、自らクールダウンする場所に行き、自分の気持ちを鎮める様子がみられるようになった。学習面でも達成感が味わえる経験を通して、意欲的に取り組む場面が多くみられる。