【28】日本語習得に課題のあるLD傾向の帰国子女生徒への支援の事例
帰国子女のA生徒は、B高等学校普通科に在籍する1年生であり、LD傾向がある。併せて日本語(特に漢字)の読み書きや意味の理解に困難を抱えている。
本件は、学校外部の相談機関の助言を基に、学校と本人、保護者が合意形成を図りながら、合理的配慮を提供した事例である。B高等学校では、合理的配慮協力員による授業観察を行い、その行動観察結果を、副校長、担任、特別支援教育コーディネーター、合理的配慮協力員、必要に応じてスクールカウンセラー(以下、「SC」という。)とも相談しながら、授業における合理的配慮について検討し提供した。合理的配慮協力員が、国語や日本史の授業時間に教室内に入り、タブレット型端末を用いて、教員の指示内容を視覚的に提示したり、説明を加えたりした。さらに、放課後、短時間ではあるが、合理的配慮協力員が周囲の目が気にならないように配慮して、個別指導を行った。これらにより、A生徒は、安心して支援を受けることができ、補助プリントを手元に置いて学習するなど、「読み」について自分で対応する様子が見られた。
【27】気持ちの切替えが苦手な幼児に対して、関係諸機関が連携し、視覚的な支援等を行うことで幼児が落ち着いてきた事例
A児は、B幼稚園の4歳児学級に在籍する幼児である。本件は、A児が、B幼稚園のあるC市立総合教育センターの相談を活用し、特別支援教育担当教員と学級担任の連携のもと支援を受け、園生活を送っている事例である。
A児は、幼稚園入園に当たり、保護者から、気持ちの切替えや感情のコントロールが難しく、個別の支援が必要である旨の申し出があったため、C市教育支援委員会での検討を経て支援に至っている。
入園当初は、自分の思いが通らないと他の園児や教員をたたいたり、物を投げたりすることがあった。また、初めて経験することに不安を覚え、行事の前などはなかなか教室に入れないこともあった。
A児の学級担任、特別支援教育担当教員、保護者が、C市立総合教育センターで実施している医療相談を利用し、A児の実態や支援の方法について共通理解をする場を設けた。幼稚園では、特別支援教育担当教員が学級担任と連携して、A児に他の園児の気持ちや場の状況を伝えたり、視覚的な支援を行ったりするなどの合理的配慮を提供することにより、A児が感情をコントロールできる様子がみられるようになってきている。
【26】特別支援学級の小学校4年の児童に対し、視覚的に分かりやすくした支援を行うことによって、安定した学校生活を送れるようにした取組
A児は、B小学校の自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する4年生である。算数と自立活動以外は交流及び共同学習で通常の学級で学習している。
A児は情緒障害の傾向があり、特別支援学級に在籍する以前は、学習に対して前向きに取り組もうとする反面、算数の学習や生活面で、自分の思い通りにならないとストレスからイライラしてしまい、教室で突然大声を出してパニックになってしまう様子が見られていた。特別支援学級での学習では、いつでも九九を確認できるように九九表を手元に置きながら問題を解いたり、マス目の大きい計算専用プリントを用意したりして、自分の力で学習できる機会を作ってきた。また、ゲームに負けるといつまでも悔しがり、気持ちのコントロールが難しい場面が交流学級でよくみられた。そのため、特別支援学級では少人数で、はっきりしたルールの中で気持ちよくゲームに参加ができる体験を積み重ねてきた。
その結果、少人数では自分の気持ちを落ち着いて話し、穏やかに学習や自立活動に取り組む事ができるようになり、徐々に気持ちの安定した学校生活を送ることができるようになってきた。
【25】巡回による通級指導の担当者と指導に関する情報の共有を行い、集団への適応を目指した中学校1年生の事例
A生徒はB中学校の通常の学級に在籍する1年生で、自閉症スペクトラムの診断がある。興味関心の偏りやコミュニケーションの難しさがある。小学生のときに、通級による指導を利用しており、中学校入学後は、C中学校の通級による指導担当者による巡回による指導を受けている。グループ学習や休み時間において、クラスの生徒との関わりに課題がみられる。
A生徒の支援に当たっては、巡回による指導の担当者と連携を図りながら、A生徒が聞いたことをメモしたり、他者との関わり方について個別に指導を行ったりした。また、興味関心の高いことを活動に取り入れることで、A生徒が自信をもって活動に参加できるようにした。
【24】通級による指導において、特性に応じた学び方の指導を行うことによって自信がもてるようになった、学習障害と注意欠陥多動性障害のある中学2年生の事例
通常の学級に在籍し、学習障害(LD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)を併せ有するA生徒(中学2年生)に対し、通級による指導で、主に国語科の内容を取り扱いながら、特性に応じた学び方の指導を行うとともに、通常の学級における教科の指導においても合理的配慮を行ったことで、学習への適応が図られ、本人が学習に対し自信が持てるようになった事例である。
注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、通級による指導、国語
【23】感音性難聴及び弱視のある特別支援学校中学部3年生のダウン症の生徒の居住地校交流における合理的配慮
A生徒は、B特別支援学校に在籍する中学部3年生であり、感音性難聴や弱視を併せ有するダウン症の生徒である。A生徒は、日常生活において補聴器や眼鏡は装着しておらず、話し言葉のみのやりとりが難しく、見えにくさもある。
本事例は、A生徒が居住する地域のC中学校の特別支援学級の生徒との居住地校交流を進めるに当たり、合理的配慮の提供をどのように行ったか、その取組について示したものである。
居住地校交流を実施するに当たり、B特別支援学校とC中学校の間で、A生徒の活動に対する合理的配慮について検討した。A生徒が見通しをもちやすいよう、事前に居住地校交流当日のスケジュール表を作成し提示したり、携帯型会話補助装置(以下、「VOCA」という。)を活用したやりとりができるようにしたり、A生徒が好きな作業や製作活動を居住地校交流の授業に取り入れた。
必要な支援を行った結果、A生徒は、自信をもって活動に取り組み、積極的に活動に参加する姿勢へとつなげていくことができた。
【22】自閉症スペクトラムの小学4年生の児童に対して、学習量の調整と特性に対する配慮によって学習への意欲を高めた事例
本件は、A小学校の自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する4年生の自閉症スペクトラムのあるB児について、学習量の調整と特性に対する配慮を行った事例である。
B児は、注意集中の時間が短く、できないと思うと意欲が低下する。一度に多くのことを処理することが苦手で、話の一部だけを聞いて反応し、適切な行動がとりにくい。また、書くことや、物を片付けることも苦手である。
B児への支援に当たっては、関係機関と連携をとり、保護者と合意形成を図りながら、個別の教育支援計画と個別の指導計画を作成した。さらに、交流学級の担任とB児の特性について共通理解を図り、合理的配慮を検討した。具体的には、教科学習においては、一時間の学習の流れを明示して見通しをもたせたり、ノートに書く量を調節したりした。また、授業の途中経過を確認し、学習に集中できない時は深呼吸をするなどして気分転換を図ったり、B児を理解してくれる児童と同じグループにしたりするなどの配慮を行った。これらの結果、以前と比較して意欲的に学習を継続できるようになってきた。
【21】周囲の言動や音に過敏に反応し、他者との関係性に困難さを有するアスペルガー症候群の中学2年の生徒に対する合理的配慮の事例
A生徒は、アスペルガー症候群で、私立のB中学校の通常の学級に在籍し、全教科の授業を通常の学級で受けている。どの教科においても落ち着いて前向きに取り組み、疑問点を残さないよう、積極的に質問もする。また、理解が早く、国語や英語を中心に優秀な成績である。ただし、全体の場での指名による発言や音読等は緊張する様子がみられる。
生活面では、不安感が強く、初めてのことや心配なことがあると、事前に必要以上に考えすぎてしまう傾向がある。対人関係では、どのような状況であっても他人を受け入れ、穏やかに接するため、集団になじめない生徒やよりどころを求める生徒がA生徒のもとに集まってくるが、実際にはうまく対応できず、自分で抱え込むことで受けるストレスは大きい。また、自分とは関係ないところで起こっている問題までも気に病む傾向がある。このようなことから、他人との距離のとり方を本人が納得できる形で説明したり、A生徒の思いを話すことによって気持ちを整理させたり、別室で一人になる時間をつくるという合理的配慮を行った。このことにより、少しずつ落ち着いて学校生活を過ごせるようになってきた。
【20】自傷行為や他害行為のある幼児に対して、地域のネットワークを活かして支援を進めた事例
A児は、B幼稚園の年少クラスに在籍している。納得できない事があると自傷行為が見られ、他の園児に対する他害行為も見られる。また、絵本の読み聞かせや集団で話を聞く時間に教室を走り回ったり、ルールの理解が難しく、他の園児とのトラブルも絶えなかったりする状況であった。
B幼稚園は、C特別支援学校の特別支援教育コーディネーターによる巡回相談を定期的に活用している。保護者は、A児の幼稚園での運動会の様子を参観して、落ち着きのない行動が気になり、発達相談を行っているB幼稚園のあるD市の母子保健課に電話相談をした。その結果、B幼稚園とC特別支援学校の特別支援教育コーディネーターだけではなく、D市の保健センターの保健師も加わって地域のネットワークを形成し、A児への合理的配慮について検討した。
検討を受けて、B幼稚園以外の学びの場として、地域の児童発達支援事業所を週1回程度利用することとなった。まだ、他の園児とのトラブルも見られるが、全体に対する説明を個別に説明したり、言葉による説明だけではなく、教師が動作で見本を示すなど視覚的な支援をしたりすることで、落ち着いた様子が見られるようになってきている。
乳幼児の発達支援事業、保健センター、保健師、ネットワークの形成、特別支援教育コーディネーター、児童発達支援事業所
【19】特別支援学級に在籍する知的障害のある小学5年生の児童が、自信をもって活動に取り組むための合理的配慮
A児は、B小学校の知的障害特別支援学級に在籍する、知的障害及び広汎性発達障害のある小学5年生である。本事例は、A児が自信をもって活動に取り組むための合理的配慮を検討したものである。
A児は、活動の手順が理解できていれば安心して活動に取り組むことができるが、自信のないことや新しい場面になると、それができずに活動を止めてしまうことがある。このため、活動に入る前に視覚的に手順や方法を伝えて見通しをもたせる、必要に応じて手順カードを活用する、活動の内容や手順をペアやグループの下級生に教えたり指示を出してまとめたりするという経験を重ねた。これらの取組により、A児が手順を自分で確認しながら安心して活動に取り組み、更に、下級生と関わりながら活動を繰り返すことでA児が自信をもつことができた。