【18】特別支援学級に在籍する小学4年生のダウン症の児童が、主体的に算数の学習に取り組むための合理的配慮についての事例
A児は、B小学校の知的障害特別支援学級に在籍する、ダウン症の小学4年生である。本件は、A児が主体的に算数の学習に取り組むための合理的配慮についての事例である。
A児は、20までの数を数えたり、それ以上の大きな数を読んだりすることはできるが、足し算や引き算などの計算をすることについては困難さが見られる。保護者からは、できるだけA児のもっている力で何事にも取り組ませ、自分で学習できる力を身に付けるための支援をしてほしいとの申し出があった。
そこで、B小学校特別支援学級担当者で話合い、A児が自分で操作しながら答えを導き出すための教具の開発と、正答を確かめるための手立てを考えた。
簡単な具体的操作をともなう活動設定とプリントを提示をすることで、A児に活動の見通しをもたせることができた。その結果、A児の主体性を引き出し、達成感や満足感を感じさせることへつなげることができた。
【17】知的障害のある自閉症の年中児に対して、園全体で支援の在り方を検討し、本児の意思の表出を目指した事例
A児は、幼稚園の年中児クラスに在籍している。自閉症の診断を受けており、知的な遅れがある。園内では一定の事柄に対するこだわりの行動、嫌な経験を引きずるといった様子も見られる。
園ではケースカンファレンスを行い、園全体でA児の様子について把握し、必要な支援が行えるよう体制を組んでいる。また、補助教員の支援により、クラスで他の幼児と同じ活動を楽しめるようにした。A児に発語がないことに疑問をもつクラスの幼児には、A児の保護者の同意を得て、クラス内でA児の困り感について話す機会を設けるなどして、A児への理解が深まるようにしてきた。こうした支援のもとで、A児が主体的に活動に取り組もうとする姿がみられるようになった。
【16】知的障害のある小学1年生の表現力をつけるための合理的配慮
A児は、B小学校の知的障害特別支援学級に在籍する、軽度の知的障害及びADHDの傾向がある小学校1年生である。本件は、話したいと言う思いは強いものの、話の内容が他の児童には伝わらない状態のA児に、表現力をつけるための合理的配慮の事例である。
合理的配慮の内容については、言語聴覚士(ST)のアドバイスも参考にするなど、外部専門家も活用した。
【15】小学2年生の水頭症の児童が安心して学校生活を送ることができるようにするための合理的配慮の事例
A児は、水頭症があり、低身長で身体の動きに課題がある、通常の学級に在籍する小学校2年生である。本事例は、A児の安全を確保し、安心して学校生活が送れるようにした合理的配慮の取組である。
A児が普段の学校生活を送る上で困難さを感じないようにするため、トイレや手洗い場に踏み台を設置したり、階段の昇り降りなどの移動の際に時間を少し長めにとったりして、安全を確保するようにした。また、体育の授業で、他の児童と全て同じ活動内容や学習課題を設定するのではなく、A児に合ったものに変更・調整したりしている。また、他の児童もそのことを理解している。
その結果、A児は安心して他の児童と学び、自信をもって学校生活を送ることができている。
【14】通常の学級に在籍する一斉指導での理解に難しさのある小学5年生の児童について、校内の連携により指導を充実させた事例
通常の学級に在籍するA児(小学校5年生)が、通級による指導を活用しながら学習を行っている事例である。
A児には、ことばのやりとりや数の計算、認知面や対人関係面での苦手さがあり、一斉指導での理解に難しさがみられた。そのため、1年生後半から保護者と学級担任及び通級による指導担当者が合意形成を図り、通級による指導を実施してきた。
通級による指導を週3時間設定し、視覚的な補助資料の活用、単元ごとの学習内容の精選、課題提示方法の工夫をしながら国語と算数の苦手な部分を指導している。指導に当たっては、学級担任、通級による指導担当者、特別支援学級担任、合理的配慮協力員等が連携に努めている。特に、学級担任と通級による指導担当者間において、ねらいと活動内容を示した「連絡帳」を作成し、日常の取組や情報を両者で共有し活用している。
その結果、A児は、通常の学級での学習を基本に、通級による指導を積み重ねることによって、意欲と集中力の向上と学習面での充実がみられた。
【13】正しい発音の仕方が身に付いていない小学4年生の児童に対する、言語聴覚士を活用した支援の事例
A児は、B小学校の通常の学級に在籍する小学4年生である。学力的には問題はないが、正しく発音できない音があり、サ行の発音が、シャ行やヒャ行の発音になったり、幼児言葉のように聞こえたりするため、A児自身も、人前で音読したり、発表したりすることに抵抗感がある。
本事例は、学級担任と合理的配慮協力員が連携して、A児が抱える困難さである発音について、言語聴覚士(ST)を活用し、支援を行った事例である。
A児は、言語聴覚士からの支援を受け、自分が苦手とする音の正しい発音の仕方を理解し、また、学校や家庭でも練習を積み重ねることによって、次第にサ行の発音ができるようになってきている。A児自身も正しく発音できるようになったという実感があり、児童朝会(委員会活動)では全校児童の前で堂々と発表することができた。
【12】特別支援学校(知的障害)に在籍する知的障害と自閉症を併せ有する中学部1年の生徒が、交流及び共同学習においてタブレット型端末を活用した事例
A生徒は、特別支援学校(知的障害)(以下、「B特別支援学校」という。)に在籍する、知的障害と不注意・多動性を伴う自閉症のある中学部1年生である。
A生徒は、一つのことに取り組んでいても、視覚や聴覚からの情報、環境の変化等にすぐに反応することが多く、また、行動の切替えに時間がかかる。
そこで、交流及び共同学習において、A生徒の注意がそれないよう、するべきことや注目点が明らかになるように、A生徒の担任と交流及び共同学習先のC中学校の担当教員、合理的配慮協力員の三者で協議を行い、A生徒が興味のあるタブレット型端末の活用を検討した。
A生徒は、交流及び共同学習において、交流先の生徒の前で社会見学の事後発表を行い、自信と達成感に満ちている様子が見られた。
【11】知的障害特別支援学級に在籍する小学6年の児童に対して、自己肯定感を高めるため、人との関わりのスキル獲得と得意なことに取り組ませた事例
知的障害特別支援学級に在籍する知的障害とADHDを併せ有するA児(小学6年生)が、自己肯定感を少しずつ高めていった事例である。
A児は語彙の少なさに加え、相手の気持ちをくみ取ることが苦手であり、文章の内容や教員、他の児童との会話の内容を十分に理解できていない。そのため、交流学級の児童ともっと仲良くなりたいと思ってはいるものの、自信のなさから関わりをもとうとしなかった。また、A児は双子の姉と比較されることにより、自己肯定感が低かった。
そこで、教室環境を整備したり、A児の成長を保護者に知らせ、家庭でも褒めてもらったりすることで、安心できる場や称賛される場を確保した。その上で、ソーシャルスキルトレーニング(以下、「SST」と言う。)を取り入れたり、特別支援学級の児童と遊ぶ環境を設定したりして、具体的な体験や人との関わりの中で有効なスキルを身に付けられるよう配慮した。また、A児が興味のあることを授業に取り入れ、達成感や自信をもたせる場面を増やした。これらを通して、A児が自信をもって生き生きと過ごす様子が見られるようになってきた。
【10】知的障害特別支援学級に在籍する小学6年生の児童の交流及び共同学習における合理的配慮提供の取組
A児は小学6年生で、知的障害特別支援学級に在籍している。A児は難病指定の症候群、股関節脱臼、斜視と診断されている。コミュニケーション面では、大人とはよい関係を築くことができるが、同学年の児童との間でうまくコミュニケーションをとることができず、集団の中で良好な関係を保つことが難しい場面がみられる。そこで、同学年の児童と交流及び共同学習を行っている。
本事例は、A児の交流及び共同学習における合理的配慮の提供の取組をまとめたものである。
交流及び共同学習を行うにあたっては、特別支援学級の担任、通常の学級の担任、特別支援教育支援員の間で、学期ごとに作成するA児の個別の指導計画を共有した。また、事前に交流を実施する通常の学級の担任から得た資料をもとに、A児に対して授業についての説明を行い、授業における課題への見通しをもたせたり、大まかな活動内容を理解させたりして、授業に参加させるようにした。その結果、A児は、「できた」と思えることを少しずつ積み重ねていき、自信や達成感を得ることができるようになった。
【9】日々の学習や生活の積み重ねの中で、人とのやりとりが少しずつ良好になったADHDと知的障害のある生徒の事例
本事例は、通常の学級に在籍する中学1年生のA生徒の事例である。A生徒はADHDと知的障害を併せ有している。保護者の「通常の学級で学校生活を送らせたい。自分のとった言動の何が問題なのか、何がおかしいのか等を通常の学級で学ばせたい。」との願いと、A生徒の「大勢の中で生活したい。学習したい。」との思いをもって中学校へ入学してきた。表情は明るく、他の生徒と話すことが大好きであるが、相手との距離感がつかめず、こだわりもあるため、些細(ささい)なことから他の生徒とトラブルになることが多い。学習面では、授業の内容がほぼ理解できない現状で、筆記用具も用意せずに、事前に準備する物もそろっていない様子がみられた。
A生徒が少しでも授業内容を理解し、学習への意欲を高めることを第一に考え、カードによる視覚的支援で行動の調整を図ったり、自分で目標を決めて実行させたりするなど合理的配慮の内容を検討し、支援体制を整えて実施している。